📚 太宰治

2024/08/06

 とても短い作家評第19回です。

 太宰治は漱石や鷗外に比べ若者に人気があるといわれる作家です。 無頼派とも言われ、やや暗いものの、誠実さの伝わる独特の語りが特徴です。 第一回の芥川賞を石川達三の「蒼氓」と争い、落選したのですが、 選考委員の川端康成が太宰に対し「目下の生活に厭な雲ありて」といって 受賞に否定的だったというのが有名です。

 戦後「斜陽」「人間失格」といった作品でベストセラー作家となりますが、 岩波少年文庫で取り上げられた作品は 「走れメロス」「富嶽百景」「竹青」「お伽草紙」「女生徒」などです。


 このうち「メロス」「竹青」「お伽草紙」はいずれも 原作を作者風にアレンジした作品となっています。 とはいえ、有名な原作に乗っかろうという魂胆ではなく、 作者自身のモチーフがまずあって、それに合う原作を選んだという感じです。 作者自身を主人公にした「富嶽百景」が暗いのに対し、 「メロス」「竹青」、「お伽草紙」の「浦島さん」は結末が異様に明るく改変されているのに気づきます。 「女生徒」も悲観的な下りが多い割にラストに「王子さまのいないシンデレラ姫」と記され、 妙に明るい終わり方です。 これらは何か意味をもっているのかもしれません。

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