📚 ライマン・フランク・バーム

2024/07/25

 とても短い作家評第16回です。

 ライマン・フランク・バームは「オズの魔法使い」シリーズで知られたアメリカの作家です。 しかし、人生は順風満帆とはいいがたく、 44才で「オズの魔法使い」を出すまでいろいろと苦労したようです。

 「オズ」は世に出るやたちまち人気作品となり、 もともと劇作家でもあったバームは続編を書きながら、 オズを劇に仕立て、各地を公演して回ったそうです。 ぼくも何作かオズシリーズを読んでみましたが、 残念ながら第一作を超えるものはありませんでした。 ただ、第一作の中では次から次へと事件が起き、その量は優に数作ぶんはあると思います。


 主人公のドロシーがたつまきによって魔法の国に着くのはきわめてアメリカ的です。 そもそも頭のないかかし、心臓のないブリキの木こり、勇気のないライオンとともに旅をする設定も 何かを暗示しており、あとになってなるほどとわかる仕組みです。 西の国の魔女をはじめ、次から次へと現れる敵と ドロシーたちが対決するドラマはまさに息をつくひまがないという点で、 スピルバーグの映画の世界に通じるものがある気がします。

 故郷に帰りたかったドロシーは、 魔法の国に着いたときからはいていた銀の靴で家に帰ることができたわけですが、 かかしも、ブリキの木こりも、ライオンも求めていたものはすでに持っていたことがわかります。 これがこの作品のテーマであり、哲学です。 名作というものは、その中に深いテーマあるいは哲学をもっているという典型です。

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