📚 夏目漱石

2024/08/02

 とても短い作家評第18回です。

 夏目漱石はいわずと知れた日本の代表的小説家で、 東大の教師を勤めたのち、朝日新聞社に入り、職業作家の道をめざします。 処女作「吾輩は猫である」につづき、「草枕」「三四郎」「こころ」「明暗」など 書いた作品は当時全て好評でしたが、それはつまり、インテリ受けしたということです。

 「坊っちゃん」は「吾輩」に続く二作目で、 漱石の作品の中では珍しく筋がはっきりし、青少年の読者が面白く読めるものとなっています。 話は四国の中学に勤務することになった青年教師の坊っちゃんが 悪戯な田舎の生徒たちに手を焼きながら、 卑劣な教頭の赤シャツを同僚の山嵐とともに懲らしめるというものです。


 有名なマドンナという女性が登場し、松山という野蛮な土地柄を背景として、 主人公の義憤がはじけるという進行になっていますが、 現在の松山は「坊っちゃん文学賞」というものを設置し、 漱石に酷評された風土を逆に宣伝材料にしているところなどは、 どこか作品に現れた県民気質を表しているような気もします。

 いずれにせよ、 漱石の作品は児童文学とはいえませんが、 多く児童文学全集に入っているのは大人の文学の入門編ととらえられているからでしょう。

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