📚 佐藤さとる

2024/06/04

 とても短い作家評第9回です。

 佐藤さとるは本格的ファンタジーを日本で初めて書いたと言われる作家です。 『だれも知らない小さな国』は処女作にして代表作になっています。 この作品には今読んでみても、何か懐かしくて、ひかれるものがあります。 気づくとぐんぐん引きこまれて読んでしまう作品です。

 描写がすぐれているわけでもなく、 ストーリーがそれほどドラマチックというわけでもないのですが、 何か忘れられない味わいのようなものがあります。 それは後年の、例えば『机の上の仙人』などには感じられない、 ある気分です。


 小学生の頃の遊び場を忘れられず、大人になってそこに小人がいるのを発見し、 そこにひそかに小屋を建て、小人たちとともに生活するという、 ある意味で退嬰的とも思えるお話なのですが、 それは、大切なものを忘れてしまう大人への警告を内にもっていると思えます。 ふり返れば、それはあらゆる優れた児童文学のもつメッセージではないかと思えるのです。

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