📚 宮沢賢治

2024/05/02

 とても短い作家評第4回です。

 宮沢賢治はぼくの最も好きな作家です。 その作品は童話とされていますが、童話のワクを超え、 心ある大人たちに愛されています。 生前作品が大して評価されず、死後になって有名になったのは残念なことです。 彼は生活闘争の中で疲弊し、若い命を散らせてしまったからです。


 最大の評価を受けているのは『銀河鉄道の夜』であることは間違いないでしょう。 その他に『よだかの星』『セロ弾きのゴーシュ』『注文の多い料理店』などが 有名作品としてぱっと思い浮かびます。 詩かどうか意見がわかれますが『雨ニモマケズ』、さらに『永訣の朝』、 『春と修羅』といった詩も個性的で、彼にしか書けない作品だと思います。

 今は『グスコーブドリの伝記』をご紹介しておきましょう。 ヘンゼルとグレーテルを思わせる書き出しで始まるこのお話は、 仲のよい兄妹が飢饉のため親をなくし、離ればなれになります。 その後のブドリがメインの主人公で、彼はてぐす飼い、農場の下働きをしつつ、 クーボー博士と出会って技師になり、最後は人工的にカルボナード火山を爆発させ、 イーハトーヴを冷害から救うため、一命をささげます。 ここには、賢治の技師として、作家として、思想家としての あらゆる側面が出ているといっても過言ではありません。 現代科学では火山の爆発は地域の寒冷化を促進するとされていて矛盾したりします。 これは最終稿ではなく、賢治が生きていれば他にもいろいろ手を入れたでしょうが、 この作品はそれ以上に崇高な、 彼の現代へのメッセージがこめられている気がしてしかたありません。

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