📚 コナン・ドイル

2024/05/06

 とても短い作家評第5回です。

 ドイルはシャーロック・ホームズを生んだ推理小説家として知られています。 しかし、本人は推理小説よりSF小説のほうが好きだと語っており、 映画にもなった『失われた世界』という作品が有名です。 ぼくもホームズ物はひと通り読んだのですが、 全体に暗いムードが漂っており、それほど好きにはなれません。

 これに対し、SFはどれも明るい、いやエネルギーに満ちた別世界となっています。 その原動力となっているのが共通して出てくるチャレンジャー博士という人物です。 もちろん、『失われた世界』も面白くないわけではないのですが、 南米の奥に恐竜の生き残った別世界があるというお話は読み進むにつれ、 無理が目立つようになり、再読三読には耐えない作品だと思うようになりました。 ぼくはハガードの『洞窟の女王』のほうが好きです。


 評判は全く高くないですが『地球最後の日』(原題:毒ガス帯)という作品があって、 ぼくはこちらが大変気に入っています。 『失われた世界』後日譚となっているので、 『失われた世界』を読んでいたほうがピンとくる部分もありますが、 読んでいなくても全く問題ないです。 地球に隕石が落ちるのに似た地球最後の日をどう迎えるかというお話です。 何かが起こりそうな予感、刻々と迫る死の恐怖、死に絶えたロンドンの町の彷徨、 そういうカタストロフィの気分がたまりません。 ドイルはそういう語りに非常にたけており、 その恐怖小説的側面がホームズものを他の推理小説群から際立たせたのではと思います。 どこか岡本綺堂や横溝正史に通じるものを感じます。

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