📚 アレクサンドル・デュマ

2024/06/19

 とても短い作家評第12回です。

 アレクサンドル・デュマは大デュマと呼ばれる18世紀の歴史小説家です。 フランス革命後の激動の時代に生き、 『三銃士』『モンテ・クリスト伯』『鉄仮面』の作者としてあまりにも有名な作家です。

 ここでは比較的知られていない作品である『千霊一霊物語』を取り上げてみたいと思います。 この作品は生首が口をきくというショッキングな事件をきっかけにはじまる短編集です。 デュマ自身が登場人物の一人として現れるのですが、 それはフィクションだとすぐにわかるかたちになっています。 マリー・アントワネットを初めとする貴族たちが革命政府の手によって 悪名高いギロチンにかけられ、草場の陰に消えていったその歴史が 何人かの目撃者の語りによってよみがえります。


 しかし、感動的なのは「ラルティファイユ」という大泥棒の悔悟、 そして最後の、青白い顔の美女が語るドラキュラまがいの吸血鬼譚でしょう。 この吸血鬼譚は銀の十字架とかニンニクとかは出ず、 むしろ吸血鬼自身の血が魔除けになるというユニークな展開になっています。 デュマの迫真の語りは冴え、9編あまりの短編はどれも佳作です。 『三銃士』や『モンテ・クリスト伯』はあまりにも長いので、 デュマとはどういう作家かと気になる人は、この作品から読んでみるといいかもしれません。

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