📚 ジュール・ヴェルヌ

2024/06/14

 とても短い作家評第11回です。

 ジュール・ヴェルヌはフランスのSF作家で、子供向けの冒険小説を多数書いたことで有名です。 『15少年漂流記』『80日間世界一周』『地底旅行』『海底2万里』『気球に乗って5週間』『月世界へ行く』……、今でも多数の作品が翻訳刊行され、その人気は衰えません。 映画化された作品も多くあります。

 ここでは『80日間世界一周』を取り上げてみたいと思います。 話は1872年、イギリスのロンドンに始まります。 主人公のフォッグという正体不明の紳士は旅行などしそうもない謹厳実直な人間として登場します。 召使いのパスパルトゥーもまた、フォッグに雇われたばかりの青年で、 旅行などまっぴらというのですから、最初のあたりは一体どういう展開になるのか読めません。


 賭けのためにその日のうちに旅に出るフォッグは銀行強盗に間違われ、 道中ずっと刑事に追われます。 紅海経由でインドへ着き、そこで殺されかけた女性を助け、行をともにするのですが、 代わりに召使いと別れ、船に乗り遅れとさんざんな目にあいながら、 日本の横浜に寄港します。 明治初年の日本の描写は、他の紀行文からのまた引きらしいですが、 興味深いものがあります。 さらに西部劇まがいのアメリカ横断鉄道の様子なども、 今読むと何かとても懐かしく感じます。 最後は1日遅れでジ・エンドなのですが、 ここで東回りに旅行したことが功を奏すということになります。 スリルとサスペンスに満ちた、ヴェルヌの最もよき時代の傑作であると同時に、 150年前の世界とはどんなものだったかを知らせてくれる記念碑的な作品です。

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