📚 ラーゲルレーヴ

2024/06/09

 とても短い作家評第10回です。

 ラーゲルレーヴはノーベル文学賞を受賞したスウェーデンの女流作家で、 童話『ニルスのふしぎな旅』の作者として知られています。 この作品は乱暴な、なまけものの少年ニルスが魔法で小人にされ、 がんたちと北国へ飛び、戻ってくるまでの冒険を描いています。

 半年以上に及ぶ旅の中で、ニルスはいろんなことを学び、 いつかなまけものでなく、思いやりのある、親孝行な少年へと変身しています。 どこか、グリムやペローといったメルヘンを思わせるこの作品には、 しかし、メルヘンにはない、子供と動物たちとの心の交流がしっかりと書きこまれています。 この作品はまた、スウェーデン南部からラップランドまでの旅行記の様相も呈しています。


 同じ作者に『軽気球』という短編があります。 これはヴェルヌの『気球に乗って5週間』を愛読していた 十代前半の兄弟に起きた悲劇です。 昔の音楽家への夢をあきらめ酒飲みに転落した父、 息子たちへ深い愛情をもちながら離婚のため会えなくなった母、 気球を作りあげて空を飛びたいという兄弟の夢、 それが気球を追って氷上を滑るラストシーンに集約され、 忘れられない結末となっています。

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