📚 那須正幹

2024/05/30

 とても短い作家評第8回です。

 那須正幹はズッコケ三人組シリーズで有名な児童文学作家です。 もともと児童文学の世界は、上からの、こうあるべきだという理論が、 子どもたちの読みたいという嗜好に先行していました。 子供の本選びは親や教師の強い影響下にあったからです。 那須氏はそんな風潮に風穴をあけ、子供たちの読みたい本を次々書いていきました。

 『それいけズッコケ三人組』はその第一作で、中に5作品が収録されています。 「三人組登場」が文字通りのデビュー作、 「怪談ヤナギ池」「立石山城探検記」は氏の得意とするスリラー、冒険譚であり、 準レギュラーの陽子、由美子という女生徒が活躍します。 「ゆめのゴールデンクイズ」は一種のカンニングで賞金を得ようとした3人組が、 最後180度クリーンに転身し、生徒の願望をうまくすくい上げた作品です。 宅和先生というキャラクターもここで大体確立しています。


 この他に「ズッコケ時間漂流記」「ズッコケ三人組対怪盗X」「ズッコケ文化祭事件」など つぎつぎ趣向を変えながら、3人組のシリーズ数十本を30年近く書きついだのは驚きです。 特に「三人組登場」には3人の変わらぬキャラクターがそのまま描かれているのに気づきます。 あえてトールキンの作品に比べると、冗長な記述はないし、 親近感を感じるキャラクターが生き生きと躍動するお話で、人気が出たのも当然と感じます。 もちろん、そのために主人公の成長や思想性は失われたわけですが、 それは那須氏の求めるところではないでしょうから、彼には痛くもかゆくもないことでしょう。

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