📚 ブラッドベリ
2024/04/21
しばらく、とても短い作家評というのを連載してみようかと思います。 まず、第一回です。
ブラッドベリというアメリカのSF作家がいます。 アメリカの作家の最高栄誉であるナショナル・メダル・オブ・アーツを受賞しています。 「華氏451度」という作品が映画化されていて有名ですが、 ぼくはある時はその作風に惹かれ、ある時は嫌悪するということを繰り返していて、 とても複雑な感想をもつ作家です。
「火星年代記」の一編である「2033年11月火の玉」はこんな話です。 火星人は滅亡しかかった少数者と理性ある火の玉だと告げられた 2人の神父が山へ向かい、その火の玉は人間の肉体が滅し去ったあとの精神だとわかる。 寓意的で、空想的な作風だとわかるでしょう。
漱石的にいえば、この寓意が情に流されてしまう作品も多く、 その場合失望を禁じ得ないのですが、そうでない場合、 人をうならせる知と情の融合した独特の世界を作り出します。 彼は人類の未来図を描くことが多いので、 その世界は他の作家が描かない未来の人類の日常感覚を体験させてくれます。 奇妙なノスタルジーという点で、 映画なら大林宣彦作品に似ているところがあるのかもしれません。
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